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【特定技能1号の壁】通算在留期間の上限5年を超えて更新ができる場合とは…?

特定技能という在留資格は、日本の人手不足を解消するために創設された在留資格ですが、「特定技能1号」は「通算在留期間は原則5年以内」という上限が設けられています。

「せっかく育てた優秀な外国人材が5年で帰国してしまうのではないか」

「特定技能2号への移行は本当に可能なのか、具体的な手続きや準備は何をすべきか」

多くの特定技能外国人を雇用する企業が不安に感じているのではないでしょうか。
知っておくべき「5年の通算期間の例外」について具体的事例も踏まえながら解説します。

経営者が直面する「5年の期限」

特定技能人材の長期定着に向けた課題

今後、多くの企業様が直面する可能性のあるケースとして、「特定技能1号の在留期間が残り1年を切った外国人材」への対応が挙げられます。

例えば、建設業で特定技能の在留資格を持つベトナム人Aさんを雇用している企業があるとします。Aさんは配管工事の分野で4年間就労し、会社にとって不可欠な人材ですが、特定技能1号の期限である通算5年が目前に迫っています 。

職場環境が気に入ったAさんは特定技能2号への移行を強く望んでいます。なぜなら、特定技能2号には通算在留期間に上限がなく 、2号への移行は日本での長期的なキャリアを積むことができ 、さらにご家族(配偶者と子供)を呼び寄せることが可能になるからです。

しかし、Aさんには課題がありました。

2号評価試験(建設業)の合格基準

特定技能2号へ移行するためには、日本語能力試験(N3以上)と各分野の2号評価試験に合格することが必須です。日本語能力検定N3には合格したものの、直近の2号評価試験では合格基準点の85%の得点となり、不合格という結果でした。

このままではAさんの在留継続をサポートすることが極めて困難になります。

8割以上の点数を取れば今後に繋げられる体制を構築する

特定技能1号の通算5年という原則を延長し、「通算6年」とする特例措置が設けられていますが 、この特例の適用要件の一つが、「分野別運用方針に定める『特定技能2号』への移行に必要な全ての試験について、合格基準点の8割以上の得点を取得していること」です 。

もちろん外国人本人に頑張ってもらう必要があるのが前提ですが、Aさんのように、優秀だが合格基準点に惜しくも届いていない外国人材を支援するためには、企業側でも事前対策が必要です。

1. 「特例適用」に向けた対策

特例措置は、「8割以上の得点」が最重要要件ですが 、もう一つ重要なのが、企業側が以下の要件を満たすことです 。

  • 当該1号特定技能外国人を引き続き雇用する意思があること 。
  • 特定技能2号評価試験等の合格に向けた指導・研修・支援等を行う体制を有すること 。

そこで、Aさんのケースで企業が今すぐできる対策を例示します。

企業側の支援体制の強化と文書化

  • Aさんが業務時間外に勉強している事実だけではなく、企業として採用の継続を前提に、2号試験の教材費・セミナー参加費を全額負担するなどの具体的な支援計画を策定する。
  • 週に一度、業務時間内に学習時間を確保し、現場の日本人責任者が技術指導を行う体制を確立する。
  • これらの具体的な支援体制を「学習支援計画書」として文書化し、明確に立証できる状態にしておく。

申請者本人の「頑張った証拠」の記録

  • 合格基準点の85%という点数は特例措置の要件を満たしていますが、次回の試験で合格に向けて、どのような学習計画を立て、どのような指導を受けているか、その進捗を学習記録や指導レポートとして記録しておきます。
  • 特定技能2号評価試験等の合格に向けて精励し、かつ、同試験等を受験すること、また合格できなかった場合は速やかに帰国することなどの誓約事項を入管に提出する準備を、行政書士と共に進めます 。

2. 「通算6年目」の特例措置を適用するための在留期間更新申請

Aさんは「85%の得点」により、特例措置の適用要件である「80%以上の得点」をクリアしました。しかし通算期間5年まで3ヶ月を切っており、このままでは再試験を受ける猶予がありません。

そこで、在留資格の更新手続きで、「通算6年」の特例措置を適用する申請を行います。具体的には、通常の在留期間更新許可申請の書類に加え下記の書類を準備します。

  • 通算在留期間を超える在留に関する申立書
  • 「特定技能2号」への移行に必要な全ての試験結果通知書(試験実施機関から発行された合格基準点の8割以上の得点を取得していることが確認できるもの)の写し

解決策は試験だけじゃない!「5年カウント」の例外措置を活用する

「通算5年」の期限が迫る中で、企業が専門家と連携して検討すべきもう一つの対策が、「通算在留期間にカウントされない例外的な休業期間」の活用です。

通常、特定技能1号で在留していた期間全般が「通算在留期間」に含まれますが 、特定の「やむを得ない事情」による休業・出国期間については、例外として通算在留期間に含めないことが認められています 。これにより、特定技能外国人は、本来の在留可能期間を最大限活用することができます 。

1. 産前産後休業・育児休業期間の活用

労働基準法に基づく産前6週間、産後8週間の産前産後休業や、子が1歳に達するまでの育児休業期間中(延長規定あり) 、特定技能外国人としての活動が行えない期間は、通算在留期間に含めません 。

在留資格申請時に必要な書類・注意点

  1. 通常の申請書類(更新・認定・変更それぞれのもの)
  2. 休業期間に関する申立書(参考様式第1-30号)
  3. 母子健康手帳の写し
  4. 産前産後休業又は育児休業を取得したことを疎明する資料
  5. 休業期間中のタイムカードの写し又は出勤簿の写し
  • 従業員が産前産後休業または育児休業を取得していた際は、上記の通り休業期間に関する申立書などの提出書類を準備し 、通算5年の在留期間満了前(概ね3か月前)に在留諸申請を行う必要があります 。
  • 母子健康手帳の写しや、休業を取得したことを疎明する資料 、休業期間中のタイムカードや出勤簿の写しなど、必要書類を漏れなく収集します。

2. 病気・怪我による休業期間の活用

病気・怪我による休業期間が原則1年以下(労災の場合は3年以下)であり 、かつ連続した1か月を超える期間で、特定技能外国人としての活動が行えない期間は、通算在留期間に含めません 。数日間の自宅療養や断続的な通院は対象外です 。

在留資格申請時に必要な書類・注意点

  1. 通常の申請書類(更新・認定・変更それぞれのもの)
  2. 休業期間に関する申立書(参考様式第1-30号)
  3. 医師の診断書、病院から発行された治療・入院等の事実を証明する資料(治療期間や入院期間が記載されているもの)
  4. 労災保険の支給決定通知書の写し(労災の場合に限る。)
  5. 休業期間中のタイムカードの写し又は出勤簿の写し
  6. 休業期間中の給与明細書の写し
  7. 休業期間中の給与が振り込まれている口座の通帳(直近の預貯金額を記帳しているもの)の写し
  8. 休業期間中の給与振込口座指定・同意書の写し

長期休業が発生した際は、外国人本人は上記資料を準備し、企業側は本人が持っていない資料があった場合に会社で保存している書類の写しなどを提供し、必要となる疎明資料を準備します 。企業側は、従業員が休業した際は、通算在留期間に含まれない期間の申請サポートを積極的に行うべきでしょう。

2号への移行がもたらすメリットは大きい

1. 企業の競争力強化と成長

特定技能2号へ移行したAさんは、長期的な視点でのキャリアアップが可能になります。会社はAさんを現場のリーダーや教育担当者になってもらい、外国人雇用を前提とした社内体制構築をスタートさせることができます。これにより、彼の持つ高度な技能が他の社員にも伝承され、結果として現場全体の効率が向上し、企業の競争力強化と新しい大型案件の採用・受注などを行うための余力に繋がります。また人材獲得においても、日本人にこだわらず柔軟な選択肢を持つことで、必要な人材を素早く確保できるのではないでしょうか。

2. 人材の定着と生活基盤の安定

2号に移行することで、Aさんは悲願であった配偶者と子供を在留資格「家族滞在」で日本に呼び寄せることができます。家族と日本で暮らすという長期的な生活基盤の安定は、Aさんのモチベーションと企業への貢献度を飛躍的に高めます。特定技能外国人本人も、在留期間の残りを常に把握し、計画的に2号試験の受験やキャリアチェンジの準備を進めることが重要です 。

2号になるための3大チェックポイント

特定技能ビザの長期雇用を成功させるためには、「5年後の計画」と「2号移行へのロードマップ」を、採用の初期段階から明確に持つ必要があります 。

特に重要なチェックポイントを3点提示します。

1. 技能評価試験の学習・受験支援体制の構築

特定技能1号の在留期間更新や、特例措置の申請時には、企業側には「支援体制」が求められます 。特に2号移行を目指す場合は、自社の業務スケジュールにあった具体的な「2号試験合格に向けた指導・研修・支援等を行う体制」を考えてみましょう。また申請時に立証を求められた場合に備えて、客観的にわかる証拠を残しておきましょう。

  • 学習時間の確保: 業務時間内または業務に準じる形で、週に何時間、どのような方法で学習時間を確保しているか、社内規程に明記する。
  • 費用の負担: 2号評価試験の受験費用、教材費、セミナー参加費などを会社が負担する規程を設け、領収書や支払い記録を残す。
  • 指導者の配置: 現場の日本人責任者が指導者であることを明確にし、指導内容と進捗を記録する。

2. 5年経過を見据えた「特例措置」の要件確認と資料準備(8割ラインの把握)

特定技能1号の在留期間満了まで残り1年を切った時点で、2号試験(2号評価試験や技能検定など)に合格できていない場合は、特例措置の適用可能性を検討すべきです 。

特例の適用には「合格基準点の8割以上の得点を取得していること」という要件があります 。また、試験によっては制度の対象時期が定められているため、最新の情報を確認しておくとよいでしょう 。(ビルクリーニング分野は2025年7月31日以降のものが対象、建設分野においては2025年12月以降対象となる予定など。)

参考:通算在留期間 試験結果通知書の確認方法(入管庁)

3. 通算在留期間に含まれる期間・含まれない期間の正確な管理

通算在留期間とは、特定技能1号の在留資格を有して日本に在留していた期間全般を指し 、就労していない期間や再入国許可(みなし再入国許可を含む)による出国期間なども含まれます 。

  • 企業は正確な在留期間管理を
    特定技能所属機関は、従業員の在留期間を正確に管理し、満了日の概ね3か月前までに次期更新の準備を始めましょう 。転職活動中の失業期間なども含まれるため、常に残りを把握し、計画的な雇用・転職活動を支援することが重要です 。
  • 例外措置の積極的な活用
    従業員が産前産後休業、育児休業、病気・怪我での長期休業の際は、通算期間に含まれないための申請手続きを雇用主と連携して行いましょう 。企業は、従業員が休業した際は、通算在留期間に含まれない期間の申請サポートを積極的に行うべきです 。

まとめ

特定技能制度は、外国人材の安定的な確保と活躍を目的としており、今回の通算期間に関する規定は、意欲ある外国人の日本での長期的なキャリア形成を後押しするものです 。

しかし特定技能1号は5年という期限が決められており、Aさんのように上限期限に直面したとき、限られた時間の中で経営者や人事担当者の皆様だけで乗り越えようとすると、事業の多忙さから見ても困難を伴うケースが多いのではないかと思います。

私たち行政書士法人Luxentは、外国人雇用に関するビザを専門とするプロフェッショナルとして、企業様と共に現場の課題に向き合い、この「リアルな課題」を解決するために尽力しております。
外国人雇用の課題に直面した際には、私たち行政書士をパートナーとしてぜひご活用ください。

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Luxent 安藤 光晴

記事を書いた人

行政書士 安藤 光晴 Mitsuharu Ando

行政書士法人Luxentは、福岡を拠点に全国対応しています。若さと粘り強さを活かし、外国人の方や外国人雇用が初めての法人様にも丁寧にサポートを提供しています。

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