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具体例をもとにビザ取得までの理解を深められるケーススタディシリーズです。
今回は「転職とビザ更新」についてインド人エンジニア、アニルさんのケースを取り上げて説明します。
転職は新しい環境でスキルを磨き、さらに成長できる素晴らしい機会です。しかし、外国籍の方にとって、転職は単に新しい仕事を見つけるだけではありません。現在の在留資格が転職後の仕事内容に合致しているか、そして必要な手続きをきちんと行うことが非常に重要になります。
このガイドでは、日本国内ですでに就労しており、今回転職を考えている外国籍の皆さんが、スムーズに転職後の在留期間更新許可申請を進めるためのポイントを、具体的なシチュエーションを交えながら詳しく解説していきます。
「今のビザで新しい会社に転職しても大丈夫かな?」「在留期限が近いけど、転職しても大丈夫?」といった不安を抱えている方にぜひ読んでもらいたいです。
ここでは、実際の転職事例として、インド出身のソフトウェアエンジニア、アニル・シャルマさん(28歳)(仮称)のケースをご紹介します。彼は日本でソフトウェアエンジニアとして活躍していましたが、より専門性の高いAI開発に携わるため、転職することになりました。彼の経験を通じて、転職時の在留期間更新許可申請がどのように進むのか、具体的なプロセスとポイントを理解していきましょう。
アニルさんの詳細なプロフィールは以下の通りです。
アニルさんは、インド工科大学(IIT)でコンピュータサイエンスを専攻し、卒業後はインドの大手IT企業に就職。システム開発やクラウドインフラの構築・運用に携わりながら、5年間にわたり実務経験を積みました。来日後も現在の会社でシステムエンジニアとして3年間勤務し、その技術力だけでなく、チームリーダーとしての資質も評価されていました。
将来的にはグローバルなIT人材としてキャリアを広げたいという思いから、日本の別のIT企業への転職を決意しました。日本語能力はN3レベルながらも、日々の努力で着実にスキルを高めています。しかし、転職活動中に、現在の在留期限が間近に迫っていることに気づき、転職とビザ更新の2つの手続きを同時に進める必要に迫られました。
アニルさんは現在「技術・人文知識・国際業務」の在留資格でシステムエンジニアとして働いています。しかし、より専門性の高いAI開発に携わるため、転職することになりました。しかも、在留期限が間近に迫っています。
新しい会社での活動が現在の在留資格に合致するかを事前に確認する方法として、「就労資格証明書交付申請」があります。しかし、アニルさんのように在留期限が迫っている場合は、時間的な余裕がないことが多いでしょう。
このような状況では「在留期間更新許可申請」を行うのが一般的です。在留期間を更新する際には、新しい職場での活動内容が現在の在留資格の要件に引き続き合致しているかが改めて審査されるからです。ただし、転職先での審査に不安があり、まだ退職や転職を保留している状況であれば、現在の職場で在留期間の更新を行った上で、「就労資格証明書交付申請」を行い、その結果を見て判断するといった手段も検討できます。
アニルさんの場合、システムエンジニアもAI開発エンジニアも「技術・人文知識・国際業務」の範囲内ではありますが、異なった専門性の高い分野への移行であるため、申請の際には、新しい職務内容の詳細をしっかりと説明することが賢明です。加えて、在留期限が迫っているため、迅速な対応が不可欠です。
では、アニルさんの転職に伴い、在留期間更新許可申請を行う場合、具体的にどのような手続きが必要になるのでしょうか。
転職先の会社に内定をもらったら、賃金や雇用期間、就業内容などが記入された雇用条件明示書をもらいましょう。こちらが申請のベースとなります。
在留期間更新許可申請には、多くの書類が必要です。アニルさんのケースで主に必要となる主なものは以下のとおりです。
システム開発(プログラミング分野)
クラウド構築分野
これらの学歴は、彼の職務上で必要となるスキルと密接に関連しており、職務内容との高い関連性を示す重要な要素です。
(なお、学歴要件とは別に、10年以上の実務経験や、法務大臣が告示(IT告示)で定める情報処理技術に関する試験に合格または資格を持っていることでも要件を満たせる場合があります。アニルさんは学歴で要件を満たしていますが、インドのDOEACC試験(A・B・Cのいずれかのレベル)は日本の情報処理技術試験と相互認証しているため、高校卒業までの外国人でも要件を満たせる可能性があります)
■活動内容に関する説明書
……転職先でのAI開発の仕事内容が、どのように「技術・人文知識・国際業務」の専門性要件を満たすのかを具体的に説明する書類です。高度な専門知識を必要とする技術職であることを明確に示しました。
■報酬水準が日本人と同等以上であることの証明
……転職先の会社からもらった雇用条件明示書記載のアニルさんの給与(月収350,000円)が、日本人の同様の職務内容を担当するエンジニアと同水準であることを企業担当者より確認しました。
必要書類が揃ったら、管轄の出入国在留管理局(入管)に申請書を提出します。アニルさんの場合、転職先の会社側の書類は行政書士に、それ以外の書類はアニルさん自身で準備を行い、行政書士にて取りまとめオンラインで入管に申請を行いました。
申請後、入管による審査が行われます。審査期間は通常2週間から2か月程度ですが、個別の状況によって異なります。アニルさんの場合、約2週間後に無事に許可が下り、新しい在留期間が記載された在留カードが交付されました。
ちなみに、在留期限が間近の場合でも、申請が受理されれば、2か月間は合法的に日本に滞在できます(特例期間)
アニルさんのように、日本での就労経験があり、かつ在留期限が迫っているからこそ、陥りやすい注意点もあります。
在留期間の満了日が近づいている場合は、できるだけ早く申請準備に取りかかりましょう。在留期間の満了後も引き続き日本に滞在するためには、期間内に更新許可を得る必要があります。原則として、在留期間満了日の3か月前から申請が可能です。転職が決まり次第、早めに準備を始めましょう。
申請書類に虚偽の内容を記載すると、不許可になるだけでなく、今後の日本での滞在に大きな影響を及ぼす可能性があります。
転職先の会社が、外国人を雇用する上で必要な基準(経営の安定性、事業内容の適法性など)を満たしているかどうかも重要です。
もしアニルさんが派遣エンジニアとして転職する場合、雇い主である派遣会社および派遣先での仕事内容までが審査対象となります。継続した仕事を確保し、資格外の作業に従事することがないように、よりいっそうの注意が必要です。
「転職先が決まってから申請すればいいや」と考えている方もいるかもしれませんが、アニルさんのように転職先で新しいキャリアをスタートさせるためにも、事前の準備と迅速な申請が成功の鍵となります。とくに在留期限が迫っている場合は、時間との戦いです。
日本での転職は、あなたのキャリアを大きく飛躍させるチャンスです。しかし、在留資格に関わる手続きは複雑であり、一つ間違えると、せっかくのチャンスを逃してしまう可能性もあります。
いままでの経験を活かし、転職先で新たなスタートを切るアニルさんのように、日本でのキャリアをさらに発展させたいと願うあなた。もし、在留期間更新許可申請に関して不安や疑問があれば、私たち行政書士法人Luxentにご相談ください。
私たちは、外国籍の方の在留資格に関する豊富な知識と経験を持つ専門家集団です。あなたの状況を丁寧にヒアリングし、最適な申請方法や必要書類について具体的にアドバイスいたします。複雑な手続きも、私たちプロフェッショナルがサポートすることで、安心して転職後のキャリアを築くことができます。
※本記事に登場する人物名および会社名はすべて架空のものに編集しています。
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